昭和史開封②裏ビデオ事件ねいさん、事件です

 あれは、年に二度、会社から現金が支給される夜だった。地元の駅について、お金があるので、ニュースステーションを崇め、政治を語るのが好きなオヤジの王将でご飯を食べ、帰宅した。


ポストを見ると、お宅に裏ビデオ宅配します、という印刷物があった。現金も持ってるし、王将でお腹一杯食べたし、後はビデオだよね、ついでき心で電話してみようと思った。すんなり話がまとまり、自宅に来られるのは嫌なので、関根橋の裏で取引することになった。


3本1万だったか2万だったか、この手の取引で、せっかく買ったビデオに延々アニメが入っていた、など失敗談は聞いたことあるので、ワクワク、ドキドキしながら秘密の受け取りをして、再生した。なんか薬物の取引みたいだよね。ドキドキ。本物でした。勉強になるなぁとーと思いながら、拝見してると、電話が鳴った。


「先程のビデオ屋ですが、警察の手入れがありまして、お客さんの電話番号も押収されました。警察行くかもしれませんので、よろしこ。」とのこと。まだまだ若い前途有望な若者が新聞沙汰になって将来を棒に振るかもしれない!やばい!まずは証拠隠滅。先程買ったビデオの上書き始めた。世を徹して、どーでもいい深夜番組を録画し始めた、まだ見てないのに。


夜寝る準備しても、いつ警察が来てもいいように、洋服を着て寝た。夜中に車、バイクが、建物の前に止まる音がする度、ドキドキしながら息を呑んで様子を見た。その晩は大丈夫だったが、一週間同じような警戒態勢を取った。朝は3本届いたビデオの最後をワイドショーを録画して隠滅を図った、これが終われば終了だ!


その日の夜、あまりにも不安なのは無知だからだ!との結論に達して弁護士の友達に恥を忍んで電話してみた。無知の知が一番!法律相談だ。


法律相談は一分で終わっても一時間分の金もらうんだぞ、と仁鶴さんも言わないような脅し文句を言われながら、売った方は罪があるが、買った側は問題ないだろうとのアドバイスを頂戴し、少し落ち着いた。


おい!ビデオ全部消しちゃったよ…今度は安心したら損したな、という気分になってきた。お金を払って残ったのはビデオテープ3本だ。もっと電気屋で安く買えるだろう。とほほ。


ことは言え、の話は鉄板で、どこで話しても結構受ける。オイシイ話を数万で買ったと思うしかない。

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