オペラ座で見かけたような気がしたのは確かだった。

 当時予備校生だった。


私立文系の予備校生ほど、拘束されないものは無い。授業は大抵午前中で終わり、午前一コマなんで日もあった。


たまには街のパトロールをせずにそのまま2つ隣の寮に帰り、コーヒーを沸かしてハートカクテルを読む。隣のスーパーで買ってきた惣菜パンを食べながらラジオでも聞いてみようと付けると、



細川俊之のキザな一人喋りと、いかにもバブルの服部克久さんのアレンジのテーマ曲、ワールドオブエレガンスをぼーっとしながら聞くでもなく聞かないひとときが好きだった。


ワールドの服を買うような人はこの時間仕事をしていてラジオなんて多分聞いてない。


予備校生かラジオをつけてる八百屋のおばちゃんに、マロニエ通を歩いていると、なんてナレーションしていたわけだから、終わるわね。うん、終わりよ!


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