このタイミングの良さ(悪さ)。完全犯罪失敗。

 仲良くしていただいたレコード会社の人がいた。


よく飲みに行ったり、ご飯食べに行ったり、コンサートを見に行ったりしたのだが、とある一世を風靡した女性ロックシンガー出演のミュージカルに土曜日行かないか?と誘われた。


正直、聞いたこともないミュージカルだし、出演者もなんかパッとしなかったので、最初は丁寧にお断りした。


ところが、その人にとっては自社アーティストのミュージカル、ということで、ある種義務的なところがあり、必殺文句「ご飯奢るから」に負けて、参戦した。


ミュージカルは予想通り破滅的につまらなかった。全てがつまらなかった。そのロックシンガーの問題ではなく、ストーリー、音楽、セットなど全てがダメだった。


1幕目が終わったところで、どちらからともなく、ご飯を食べに行こうという気持ちになった。


劇場を抜け出し、当時、僕のお気に入りの地下にある美人ママが居る焼肉屋に行った。


食べ終わり、階段をのぼり、地上に上がって、外に出ると車のクラクションがプップー🎶


窓から、そのシンガーが顔だして、

「何してるの?これからご飯食べに行くから、車に乗れ!」と、おっしゃる。


こちらが抜け出して、1幕目以降見てなくて焼肉を食べていたことは知らない。


店を出た瞬間、ばったり会うか?!

ドリフのコントのようなタイミングの良さ!

万引きを指摘された中学生の心境である。見られた!的な。いわゆる現行犯逮捕である、でもまだバレてない!


焼肉臭いとバレるな!色んなことが頭をよぎる。


居酒屋に連行され、「感想は?」「面白かった」と質問攻め似合う。


多分、あの時間に焼肉屋を出てくるのはおかしい、というシャーロック・ホームズ的カンもあったんだろう。質問が見てないと答えられないものに変わってきた。


そのレコード会社の人が「すいませんでした!」と自供した。

途中で焼肉屋に行くのに、出ました!と。


落ちた。


まぁ、そのアーティストにしてみれば、一生懸命熱演してたのに、途中で出られた、と言われれば、面白い訳もなく、とは言いながら、体育会的に怒られる訳もなく。


なんとなく笑いですんだが、そのレコードメーカーの人にすれば気まずかっただろう。


夏の終わりの涼しさを感じた夜だった。オールスター感謝祭の放送があって、街全体が少し浮かれていた記憶がある。


この人の曲を聴くと思い出すのだ。


ではリクエスト、バービーボーイズの目を閉じておいでよ、お願いします。