月見バーガーが好きだった後輩の話。

 ちょっと変わった部下がいた。

僕が言うくらいだから、変わっているのだろう。


僕の上司が昔の部署から引っこ抜いてくるに当たり、かつての部下で変わってるけど優秀。扱いにくいけど大丈夫?と聞いてきた位だ。


・お昼は一人で弁当を買ってきてデスクで食べる、

・飲み会は参加しない

など自己主張があったが、普通に話している限り、よく笑う明るい性格だ。


自宅にテレビは無くどうしても見たい番組があるときは車のカーナビのワンセグで見る。


髪の毛を茶色に染めている。自己主張の強い彼だった。


はじめの頃、僕の考えに彼は強く反論した。「この会社ぽくない」と。


その後何度か話をして、わかってくれてからは、持ち前の頭の良さと話の旨さで、取引きをどんどんまとめてきた。


僕は彼の出席する打ち合わせには出ないことにして、全部任せた。


自分で方針を考え、時にちゃんと相談&報告してくれて、結果を出す。地頭がいいのね、というタイプだった。


仕事中の突然話し出す彼の世間話も面白い。


人事異動の季節を前に、別の後輩が任期で地方に帰らなくてはならず、代わりに誰か欲しい人材はいるか?と聞かれ、とある地方の支店にいた若者を呼び寄せることに成功した。


その支店で出張の仕事後、僕と彼と昇進して地方に帰るこれまた優秀で頑固な若者と新メンバーの四人でとある地方都市の居酒屋で飲むことになった。


彼と酒を飲んだのは初めてだった。普通に楽しかった。


その後、僕が会社を代わってりして、合うことも滅多になくなったが、ある日彼の後輩のAくんから連絡があった。


彼が雪山で行方不明になった、と。


もともとスノボ好きで、スノボの仲間が社外に沢山いて、自慢の車にみんなを乗せスノボを楽しんでいた。


夏はスキューバダイビングでまさにYumingの「サーフアンドスノー」を地で行くライフスタイルだった。


結婚もせず、人生を楽しんでいたが、誰も足を踏み入れでない場所で滑りたくて、危険なエリアで滑っていたらしい。


雪が深くて捜索できないので春を待つらしい、そんな連絡を受けて、呆然としてしまった。


またニコニコ笑いながらお得意のジョークを話しかけてきそうだった。


その彼は秋になると必ずマクドナルドの月見バーガーを食べるのを楽しみにしていた。

夕飯を月見バーガーと決めると、クーポンを見せながら、昼から楽しみにしていた。

 

翌朝「美味かったですよ」とニコニコ顔で報告してくれた事を、この季節、月見バーガーのCMを見ると思い出す。



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