おでんの湯気の向こうに

 コートを着るようになると、おでんが恋しくなる。


村上春樹風にダッフルコートを着るが、おでん屋とか行くと匂いを重いきり吸うのが玉に瑕。(とんかつ屋も苦手)



新橋のお多幸とか間違いない。

感動はないけど、間違いない美味しいおでんが食べられる。

「かまた」という店はおでん以外のつまみも絶品。おでんも絶品。

こちらは初めて行って感動したが、それ以後混んでて入れない。




おでんはみんな行きたい気持ちが集中するから、競争率が激しい。


御多幸もそばの唐揚げ居酒屋で待ってないと入れなかった。




早稲田通りと平行に住宅地を抜ける裏通りに「ふくみ」というおでんやを誰か見つけてきた。


おばさんが一人でもやってる店で、無条件に会話に入ってくる。


時にベロベロになりろれつが回らなくなるが、それでも会話に入ってくるなんか温かい店だった。


当然ビールとか冷蔵庫から客が勝手に出して、自己申告で請求される穏やかさ。でもおばさんに悪いことはできないのでみんな正直だった思う。


おでんとお新香ぐらいしかなかった。お漬物も出された後、客が自由に味の素を振るというおおらかさ。


卒業する年、社会人になっても来ますよ!おばさんに言ったが、訪れたことはなかったと思う。


今日検索したら出てこなかった。

嘘をついたままお別れしてしまった。


朝の連ドラで東京に来た笠置シズ子とその友達が良く屋台のお電話に行くのを見てて思い出した。


おでんの湯気の向こうにはおばさんの笑顔があった。